気の向くままに、心の記録

自称:ドルオタ(仮)。茶の間のくせに語りたがり。V6とVIXXは特別な存在です。彼らのことを中心にその他のことについても書きます。

ハンサムな彼女

突然ですが、皆様は漫画がお好きですか?
贔屓にしている漫画雑誌があったり、単行本が発売されたら買うような作品ってありますか?



あるいは、人生の指針となった漫画はありますか?



私はそんなに漫画を読む人間ではなく、知っている作品も少ないですが、漫画が好きです。自分じゃ単行本も漫画雑誌も滅多に買わないけれど、図書館とかに行くと結構読んでます。時間がなくてもついつい漫画の棚に行きます。ズラッと並んだ漫画たちがいつも私を誘惑してきます。でも読むと面白くて考えさせられることがたくさんあって、また誘惑してね、って思います。



今日は、自分の在りように少なからぬ影響を与えてくれた作品と、それをめぐる話をします。






まずは作品をご紹介しましょう。



じゃん。





吉住渉ハンサムな彼女



こちらの作品は、中学生で女優の女の子・萩原未央と、映画監督を目指している天才少年・熊谷一哉の恋愛模様を描いたもので、1988~1992年にかけて、少女漫画雑誌『りぼん』で連載されていました。リアルタイムで読んでいたのは、おそらく私(1993年生まれ)の一回り上の世代、今の30代半ばくらいの方々かな。



さてこの作品、まず設定からして超お洒落です。なにせ主人公は女優なのです、アイドルではありません。お相手も映画監督志望の帰国子女の少年です。というかこの設定がもうすでにお洒落過ぎて現実味がないです(少なくとも日本じゃちょっと想像つかないです、欧米ならありえるかも)。ただ全編を通じて作者の哲学が詰まっているといいますか、設定にはじまり登場人物の服装や趣味嗜好、主要人物たちはもちろんのこと、脇役の台詞にいたるまで、とにかくお洒落、という点で筋が通った作品なので、無理なく読めます。



そもそもタイトルの『ハンサムな彼女』の「ハンサム」というのは、一哉が撮りたい女優像から来ています。一般に「ハンサム」は、男性、とりわけ見た目のよい者に対して使われることが多いですが、一哉に言わせれば、「ハンサム」は、女性に対する最高の褒め言葉、なんだとか。肉感的なエリザベス・テイラーマリリン・モンローも確かに魅力的だけど、ローレン・バコールマレーネ・ディートリッヒのような、クールで知的で堂々と男と渡り合う、そんなハンサムな女性を主役にしたカッコいい映画を撮りたい、そして彼にとっては、その主役にしたいハンサムな女性が未央、ってことなんですけど。



記憶では、小学校の4年生頃に読んだことになっていますが、その頃の私は日本の芸能人でさえ殆ど知らないような状態だったので、バコールやマレーネについては誰のことだかさっぱり判っていなかったと思います。それでもどこかで覚えていたんでしょうね。『SCREEN』や『ROADSHOW』といった映画雑誌を読むようになったとき、「ローレン・バコールマレーネ・ディートリッヒ?あれ、なんか聞いたことのある名前だな、どこで聞いたんだっけ...ああそうか、思い出した!あの漫画でハンサムと言われてた!」と、ようやく言及されていた人たちのことが判りました。確か中学に上がってからだったと思います。





ここで話がちょっと飛びますが、実は保育所に通っていた頃の幼い私は可愛いものが大好きで、ディズニープリンセスなんかにすごく憧れていました。児童文学作品の登場人物でも、『若草物語』ならベス、『赤毛のアン』ならダイアナが好きでした。



だけど当時の私は、男の子たちよりも背が高くて、男の子たちよりもずっと走るのが速くて、おまけに気も強かったから、プリンセスやベスやダイアナのような、誰かに守ってあげたいと思われる(けど実はとてもしたたかな)女の子ではなかったんです。それこそ『若草物語』で言うならジョー、『赤毛のアン』で言うならアンみたいな、勇ましい一方で夢見がちな女の子でした。



他の女の子たちは、割と女の子女の子していて、そういう中では、たとえ彼女たちと同じように可愛いものが好きであっても、私はとても異質な存在だったんだと思います。



実際よく仲間外れにされたし、首謀者はマドンナ的存在だったから、男の子たちもほとんど当てにならなくて(子供は自分とは違うと感じた者を容赦なく省く、かなり残酷な面があると思う)、そこで自分は見た目からして女の子らしい女の子ではないし、誰かに守ってもらえるような女の子でもない、ということを嫌でも思い知らされました。



小学校に上がると増々そういうことがはっきりしてきて、周りからどう見られているかというのもより解るようになるし、高学年にもなると「私は可愛いというよりはどうもカッコいいみたいだし、可愛いよりカッコいいを目指した方がいいな」と自分でも考えるようになりました。こうして受け入れてみると不思議なもので、自然と好きなものはカッコいいものに変わったし、可愛いものに憧れていたときに比べれば、人間関係も自分の気の持ち様も、随分楽になりました。



振り返ってみれば、『ハンサムな彼女』を読んだのは、丁度この時期に当たっていたんですね。



但しこんな風になりたいという自分の理想と、ハンサムな女性という概念が結びついたのは、実際には高校生になってからでした。小中学生だと、月の障りがあるとはいえ、女性というにはまだまだ乳臭い感じが抜けなかったし、その日その日が精一杯、みたいな所が大きかったのかもしれません。高校生くらいになると、割と現実的な意味で自分が将来どんな人間になりたいか、ということを考えられるようになってくるので、そこで改めて「ハンサム」というワードが浮上してきたんだと思います。





ハンサムな女性、とは、一体どんなひとなのでしょう?正直、この漫画の主人公である未央ちゃんは、私にとって、ハンサムな女性のモデルとなる存在ではありませんでした。一哉の撮る、女優・萩原未央はかっこよく見えるけど、一人の人間としての未央ちゃんは、どうしても“可愛い女の子”にしか見えなかったからです(吉住先生は可愛らしい画風だし)。



また一哉が例として挙げていた、バコールやマレーネも、はっきり言って、もともと持ってる顔やスタイルがいいから、美人だなぁという感想が先立ってしまうんですね。確かに凛然としていて、エピソードなんかからも彼女たちが決して顔や見た目だけの人間ではない、非常に魅力的な女性であったことは判るし、ハンサムな女性だなぁ、と思うんですが、筋金入りの面食いなもので(笑)、何よりもまず、顔が美しいか否かということに気を取られてしまうのです。



そんな私が、ぱっと見て、あ、この人は間違いなくハンサムだ、と感じたのは、キャサリン・ヘップバーン。彼女は目の覚めるような美人ではないけれど、内面の美が表に出ているというか、ときに息を飲むほど美しい瞬間があります。非常に堂々としていて、ダリアのような華麗な大輪の花を思わせるひとです。



長期間女優として活動したことも素晴らしいし、その一方でオスカーの授賞式などの、演技活動以外の公の場を好まなかったことなんかは、公私混同する輩が溢れかえる今の世界を考えると、毅然としていてカッコいいと思います。



また彼女は、女性らしい華やかなドレスを着る同業者の中で、当時にしては珍しいパンツ・スタイルを貫いたことでも有名で、現代の女性の在り方にかなり影響を与えた人でもあります。



あともう一人挙げるなら、デザイナーのガブリエル(通称:ココ)・シャネルです。世界で最も有名なファッションブランドの創始者で、女性の社会進出を支え、促進した、偉大なひと。彼女の伝記は何冊か読みましたが、どれも著者のココへの敬愛の念が伝わってくるものでした。



この記事を書くにあたって、改めて二人のことを調べたのですが、どうやらキャサリンは、ココの生涯を描いたミュージカルで、ココの役を演じたことがあるようです(日本版では鳳蘭さんが務められたそう)。二人の間に親交があったかどうかはわかりませんが、ココが女性のパンツ・スタイルを作った人なら、キャサリンはそれを広めた人とも言われているので、なんだか特別なものを感じました。



私は二人に憧れているけれど、私は二人とは違います。私がどんなに頑張っても、私は二人にはなれません。けれども見習うことはできるんじゃないかと思うんです、私なりのやり方で。



じゃあ二人の何を見習うのかというと、自分の考えを貫くこと、なのかなと。これは二人に共通していて、二人の最も大きな魅力でもあることだと思います。いや、二人に限らず、ハンサムな女性ってみんなそうなんじゃないかなあ。みんないい顔してるもんね。つまりハンサムっていうのは、自分自身に対して、自分の人生に対して誠実な、むしろ泥臭くあることなのかも知れません。泥臭くても極めたら、悠然と見えるのかも。人生に対して礼儀正しくあるというのは、とても単純な話なんだけど、とても難しいことです。でも譲れないことです。だって私はハンサムな女性になりたいのだから。





冒頭で影響を受けた漫画について語ります、と言っときながらどんどん論点がずれていって、やっぱり今回も自分のことしか語ってないし、出口が全く見えないのですが(苦笑)、こんな風に自分の考えのもとや核となるようなものを考えるとっかかりとなる作品に出会えたことは幸運だなあと思います。



正直『ハンサムな彼女』の話自体はあんまり覚えてなくて(←え)、吉住先生の作品だと、『ミントな僕ら』や『ウルトラマニアック』の方が実はお話としては好きなんですが、最も哲学を感じるのは、やっぱりこの『ハンサムな彼女』なんですよね。初めての長期連載だからかな?なんて言えばいいんだろ、この作品に関しては、作者の吉住渉が主人公で、ハンサムなのは吉住渉、って感じがします。うん、吉住渉はハンサムなのです。それに尽きる。



色々書き散らしましたが、そういうことです。



是非一度、読んでみてください。